桜 in "Bushido"

今日は入学式。生憎の雨模様だったが、雨降って地固まる、きっと明日からのオリエンテーションは実りあるものとなるだろう。
仙台の桜はまだつぼみだが、入学を祝って「桜」を引用。リズミカルで読んでいて心地良い矢内原訳の新渡戸稲造著『武士道』より。


 武士道(シヴァリー)はその表徴たる桜花と同じく、日本の土地に固有の花である。それは古代の徳が乾からびた標本となって、我が国の歴史の腊葉集中に保存せられているのではない。それは今なお我々の間における力と美との活ける対象である。…(略)… 封建制度の子たる武士道(シヴァリー)の光はその母たる制度の死にし後にも生き残って、今なお我々の道徳の道を照らしている。
(p.25)

…本居宣長が
敷島の大和心を人問はば
朝日匂ふ山桜花
と詠じた時、彼は我が国民の無言の言をば表現したのである。
 しかり、桜は古来我が国民の愛花であり、我が国民の表章であった。特に歌人が用いたる「朝日匂ふ山桜花」という語に注意せよ。
 大和魂は柔弱なる培養植物ではなくして、自然的という意味において野生の産である。それは我が国の土地に固有である。…(略)… 我が桜花はその美の下に刃をも毒をも潜めず、自然の召しのままに何時なりとも生を棄て、その色は華麗ならず、その香りは淡くして人を飽かしめない。…(略)… 桜花の匂う好季節が全国民をその小さき住家の外に呼び出すに何の不思議もないではないか。たとい彼らの手足が暫時労苦を忘れ、彼らの胸が悲哀を忘れても、これを咎めるな。短き快楽が終れば、彼らは新しき力と新しき決心とをもって日常の業に帰るのである。かくのごとく桜が我が国民の花たるゆえんは、一にして尽きない。
 しからばかく美しくして散りやすく、風のままに吹き去られ、一道の香気を放ちつつ永久に消え去るこの花、この花が大和魂の型(タイプ)であるのか。日本の魂はかくも脆く消えやすきものであるか。
(p.p.130-132)

 武士道は一の独立せる倫理の掟としては消ゆるかも知れない、しかしその力は地上より滅びないであろう。その武勇および文徳の教訓は体系としては毀れるかも知れない。しかしその光明その栄光は、これらの廃址を越えて長く活くるであろう。その象徴(シンボル)とする花のごとく、四方の風に散りたる後もなおその香気をもって人生を豊富にし、人類を祝福するであろう。百世の後その習慣が葬られ、その名さえ忘らるる日到るとも、その香は、「路辺に立ちて眺めやれば」遠き彼方の見えざる丘から風に漂うて来るであろう。――この時かのクエイカー詩人の美しき言葉に歌えるごとく、

    いずこよりか知らねど近き香気に、
    感謝の心を旅人は抱き、
    歩みを停め、帽を脱りて
    空よりの祝福を受ける。
(p.p.149-150)

新渡戸稲造 『武士道』 矢内原忠雄訳、岩波書店、1974

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k_sone

Author:k_sone
東北学院大学体育会アメリカンフットボール部Kayaks(カヤックス)の元監督。部員数が激減して廃部寸前にまで陥ったチームを立て直し、東北学生1部リーグに昇格させた。2011年5月、監督を辞任。

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